「不動産投資を有利に進めるためには資格を取ろう!」「自分で物件を管理しよう!」とよく言われますが、これは本当でしょうか?
不動産投資において必ず資格を取るべきか?と聞かれたら答えは『ノー』です。資格を持っていなくても不動産を管理することは可能ですし、そもそも不動産投資を有利にすることを目的に資格を取るべきではありません。しかし、資格を保有していることで得られるメリットがあることも事実です。
そこで本記事では、不動産投資における物件の管理に資格が必要ではない理由を簡潔にご紹介します。また、保有していることでちょっとトクをする資格も併せて紹介していきますので、改めて不動産投資を無駄なく取り組むために必要なことが何かをご理解いただければと思います。(※本記事は、不動産投資で自主管理を検討している方に向けてお伝えしていきます。)
不動産投資体験談
目次
1.自身の不動産管理に資格は不要
不動産投資において、不動産の管理をするための資格を取る必要はありません。一般的に、所有者の代理として賃貸の募集や不動産取引の仲介を行う場合は『宅地建物取引士』の資格が必要になりますが、自己所有の物件の管理においては資格を取る必要はありません。下記より具体的に解説していきます。
1−1.不動産管理に資格がいらない理由
不動産投資において、不動産の管理をするだけであれば資格は要りません。
そもそも不動産の管理とは『不動産の清掃』『エレベーターの保守点検』『消防設備の維持点検』『修繕工事の計画や管理』『リフォームやリノベーション』『原状回復工事』などが挙げられますが、これら業務は専門業者に依頼することになります。
専門業者に関しては、それぞれ「一級建築士」「昇降機検査資格者」「消防設備士」などの資格が必要になりますが、不動産投資家にとっては上記のような資格は不要です。また、自己所有の物件であれば、入居者の募集や契約業務に関しても資格が不要となります。
ただし、第3者の不動産取引の代理・仲介を業として行う場合は、資格が必要となりますのでご注意ください。例えば『重要事項説明書への記名・押印』『契約内容記載書への記名・押印』がこれにあたります。
1−2.保有することでちょっとトクする3つの資格
不動産投資の成果を考えた際に、保有することでトクをするであろう資格を3つピックアップしました。先にお伝えしていくと、これらは必ずしも取得するべき資格ではありません。投資の成果を考えるうえで大切なのは資格ではなく、投資の知識やスキル、経験です。資格はあくまでも参考程度に理解いただければと思います。
①宅地建物取引士
いわゆる『宅建』と呼ばれる資格です。不動産投資家がこの『宅地建物取引士』を取得することで得られるメリットは以下の3つです。
- 不動産取引に関する知識が深まる
- 土地や建物に対する知見が高まる
- 購入すべき不動産に対する判断基準が具体化する
『宅地建物取引士』を取得することで、不動産の周辺知識が高まります。しかし、必ずしも必要な資格ではありませんし、『宅地建物取引士』を取得する際にかかる時間や費用を考慮すると取得は不要でしょう。
なお、不動産取引の現場で宅建士だけが行うことができるのは、主に以下の3つです。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名、押印
- 契約書(37条書面)への記名、押印
これらの業務をかんたんに言うと、「安全に不動産取引を行うための業務」と言えます。不動産の取引(特に売買)は、数千万〜数億単位での取引になります。このような大規模な取引でトラブルが発生してしまうと、関わるすべての人々にとってのリスクになりかねません。だからこそ、不動産の取引を行う際には『宅地建物取引士』の存在が必要なのです。
ちなみに、『宅地建物取引士』は以前『宅地建物取引主任者』と呼ばれていましたが、平成27年の4月から名称が変更となりました。名称は異なりますが内容に違いはありません。どちらも同じ資格であると認識しておきましょう。
②マンション管理士
不動産投資家がこの『マンション管理士』を取得することで得られるメリットは、管理組合の運営や建物の管理について十分な知識を得られることです。
例えば、不動産投資を行っていると管理組合総会や理事会に出席する機会がありますが、その場で話し合われている内容を適切に理解できるようになることで、悪質な管理会社からマンションを守り、その資産価値を維持できるのか見定めることができるようになるのです。
マンション管理士の業務をざっくりイメージするならば、「マンション管理に特化したコンサルティング」です。マンション自体(建物)の保全に関わる業務や、住民間のトラブルに助言をするなどの業務が存在し、その範囲は多岐にわたります。
マンション管理士の業務の例として以下の2つをご紹介します。
■顧問業務
管理組合と顧問契約を結び、組合の運営をサポートします。理事会、総会への出席や助言、議案書点検などを行います。
■管理委託契約を変更する際のアドバイス業務
こちらの業務や考え方を通じて、不動産への理解は深まりますが、不動産投資の成果にフォーカスするのであれば、資格を取得するよりも、外部の専門家として活用していくことをおすすめします。
③管理業務主任者
不動産投資家が『管理業務主任者』を取得することで得られるメリットは、建物の管理業者の良し悪しを判断し、管理組合運営を円滑に進められる知識が身に付く事です。そう言った意味では不動産投資のリスク対策に役立てることは可能でしょう。
『管理業務主任者』とは、建物を管理する管理業者の業務改善を促すために創られた資格で、管理を受託した30組合に1人の割合で従業員に資格者を設置しなければなりません。
具体的には、管理組合に関する法律、建物の維持管理に関わる修繕、管理組合会計の知識を持ち、管理組合から委託を受けて事務を代行します。また、管理契約の際には不動産取引と同じように重要事項の説明を管理業務主任者が行わなければなりません。
『管理業務主任者』だけが行える業務は以下の4つです。
- 委託契約に関する重要事項の説明
- 重要事項説明書(72条書面)への記名・押印
- 管理委託契約書(73条書面)への記名・押印
- 管理事務の報告(77条)
ただし、こちらの資格も同様に、必ずしも取得をお勧めするものではございません。役立つことは事実ですが、資格を持っていても自らが事務を行うには労力を要するため、マンション管理士と同じく外部者として活用していく方が現実的です。そもそも、資格を持ってなくても、不動産投資を行うことに支障がある訳ではありません。
2.投資にかける時間を増やしましょう!
結論から言うと、資格を取得するために時間を費やすよりも、投資活動に専念した方が有益です。すでに資格を保有されている方にとっては、その知識を活かせば良い話ではあるのですが、これから資格を取得しようと考えている方は、その時間を投資に関する情報収集などに充てた方が、パフォーマンスが良くなる可能性が高まることでしょう。
具体例として、以下の平成26年度における資格の合格率と目安の勉強時間をご覧ください。
それぞれの資格は非常に難易度が高く、簡単に合格できるものではありません。5〜10人の受験者がいて1人合格できるかどうかといった確率です。また、おおよそではありますが、勉強時間も300時間〜600時間が必要だと言われています。
そもそも投資に関する知識を得るための資格ではないのにも関わらず、これだけの時間を費やさなければいけないというのは、本末転倒になりかねません。
以上の理由から、不動産投資で成果を上げたいと考えている方にとっては、原則的に必要な資格ではないと言えます。
資格名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 勉強時間の目安 |
宅地建物取引士 | 192,029名 | 33,670名 | 17.5% | 300時間 |
マンション管理士 | 14,937名 | 1,260名 | 8.4% | 600時間 |
管理業務主任者 | 17,444名 | 3,671名 | 21% | 300時間 |
3.そもそも自主管理する必要があるのか?
投資家が自ら不動産の管理をすべき事態というものはそもそも発生しません。考えるとすれば、管理を任せている管理会社を変更することです。不動産投資の成果を上げるためには、自主管理ではなく委託管理をするべきです。
その理由は至ってシンプルで、「売買や賃貸などの不動産取引から建物の管理業務までの全て」を自分でやろうとすると、相当な労力と時間がかかってしまうからです。
例えば、自主管理で業務を実施しようとすると以下のような業務をしなければいけません。
自主管理で実施するべき業務一覧 | |
賃貸管理 | 建物管理 |
入金管理・送金管理 | 日常清掃 |
家賃滞納の対応 | エレベーター保守メンテナンス |
家賃明細の作成 | 水槽点検 |
クレーム対応 | 消防点検 |
法律関係の対応 | 植栽管理 |
リフォームの発注 etc… | 修繕工事計画の立案、実施 |
– | 管理組合の会計業務 |
– | 入居者同士のトラブル解決 etc… |
これらの業務のすべてを一人で行おうとすると、専門知識が必要になりますし、それこそ資格の取得を検討しなければいけません。そうなると本来の投資の成果を上げる目的が疎かになってしまうということです。
まずは不動産管理のプロフェッショナルに管理を委託し、投資のことだけに集中できる環境を手に入れることだけを考えましょう。
4.投資効率を底上げする!おすすめ記事2選
物件の管理を委託するためには、まず管理会社のことを深く知る必要があります。不動産管理会社のそもそもの概念や業務内容、効率的な選び方を知りたい場合は、こちらの『不動産管理会社とは|一生の投資パートナーと出会う3つの極意』がおすすめです。
また、もっと実践的に投資の成果をあげていきたいという場合は、こちらの『サラリーマンが不動産投資で毎月38万円の不労所得を得る超実践的手法』をご覧いただくことをおすすめいたします。
5.まとめ
不動産投資で成果をあげるためには、投資の知識やスキル、経験を積み上げることが第一です。資格を取ることが直接的に投資の成果に影響しないことを改めて再認識していただければと思います。
もちろん資格を取ることで知識の幅が広がることは確かですが、まずは現在取り組まれている不動産投資の成果を考えるようにしましょう。
また、すでに資格を保有されている方にとっては、比較的有利に不動産投資を進められることでしょう。不動産会社に勤めた経験があってなお、それに付随した資格を保有しているということは、誰よりも不動産の事情に詳しいということです。ぜひ資格と学びを活かして不動産投資での成果を目指してください。
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