不動産経営において、収益物件の購入は始まりにしか過ぎません。
大切なことは、その後、安定して収益と資産価値を維持できるよう、しっかり管理をしていくことです。
区分所有物件の場合、建物の維持管理は各戸のオーナーで構成する管理組合の役目ですが、実務上は建物管理会社に業務を委託することがほとんどでしょう。
ところが特に投資用マンションでは、気がつくと管理が行き届かなくなっているような事例もあります。
オーナーが居住していないので気づきにくい上に、管理に無関心であることが原因です。
加えて、建物管理の質は管理会社によっても様々です。
管理の内容や管理料金に不満があれば、建物管理会社自体を変更するという選択肢もありますが、やり方を間違えると、管理会社との間だけでなく、オーナー同士のトラブルを引き起こしかねません。
日本財託ではこれまでも多くのオーナー様から、建物管理に関するご相談を受け、専門家とも協力しながら解決への道筋を付けてきました。
今回は、管理組合を構成する区分所有投資家として、長期にわたって資産価値を維持するために建物管理会社とどのように付き合っていけば良いのか、管理が行き届かなくなってしまったマンションの事例をまじえて、ご紹介します。
不動産投資体験談
目次
1. 建物管理への無関心が資産価値を下落させる
自分が住んでいるマンションであれば、管理状態にも関心を持つ人が多いのですが、自分が住んでいないマンションの組合総会ともなると、理事と理事長以外の出席者がいないというマンションも少なくありません。
だからといって、組合運営や建物管理会社が行う管理業務に無関心なままでいると、大変なことになることもあります。
1-1. 管理料を払っているのにボロボロだったマンションの事例
先日、『10年以上前に購入したマンションの管理状況が良くないのだが、どうしたらよいものでしょうか』と当社のオーナー様からご相談を受けました。
当社で物件をご紹介する前には、必ず適切な建物管理が行われているか確認しています。
これまでの管理状況をまとめた重要事項調査報告書という書類を取り寄せて、修繕の実施状況や今後の予定などをチェックするのです。
ところが現地に行ってみると、廊下は砂埃まみれで、粗大ごみは置き去りにされたままです。
共用部の電灯はところどころ切れ、夜になると足下が見えず危険な箇所もあります。日常的に管理がされているような痕跡が見えず、建物管理会社に連絡しましたが、電話がつながりません。
事務所と思われる住所まで足を運んだところ、目当ての住所には、外壁のタイルがところどころ剥がれている老朽化した建物があり、ボンネットが錆びついた車まで止まっています。
「ごめんください」と尋ねると、奥のほうから女性が一人出てきました。
『今誰もいないのよ。あたしにはわかりません。 帰ってください!』
わかりませんの一点張りで、 話になりません。
その後、ようやく建物管理会社の社長を見つけ、事情を聴くことができました。
『実は、ここ数年、何も管理していませんでした。すみません。』
数年前にごっそり社員が辞めてしまって以来、事業ができない状態になっていたとのこと。
オーナーにしてみれば、管理が行われていないにも関わらず、管理料だけを支払っていたのです。
事の次第が分かり、すぐに管理会社を変更することになりました。
管理の仕様を伝えて3社から見積もりを取って選定し、管理会社を変更することで、ようやくメンテナンスが行き届いたマンションに戻すことができました。
1-2. 建物管理に関心を持つことが第一歩
この事例のように、購入した時点では管理に問題がなくても、長年所有するなかで問題が生じることもありえます。
日常の管理はしっかりされているか、また支払っている管理費はどういった項目に使われているのか。少なくとも管理組合総会に出される報告書には、目を通しておきましょう。
また、管理に問題があるからといって、必ずしも会社を替えなければいけないわけではありません。
積極的に疑問や質問をぶつけることで、対応が改善することもあります。
建物管理会社と適切な緊張関係を持つことが資産価値を守ることにつながると言えます。
もちろん、働きかけても改善が見られない場合は、管理を変更することを検討しましょう。
2. 建物管理会社の変更を検討するための5つのステップ
管理会社の変更は、管理組合に属する全所有者に関わる重要事項です。慎重に行わなければ、後からトラブルになりかねません。変更を検討する上で大切な5つのステップをまとめました。
2-1. 現在の管理委託契約書の確認
現在の管理委託契約書から現状把握を行います。過剰な管理や必要な管理で抜けている項目がないか確認します。
「事務管理業務費」と「管理報酬」は要チェックです。また、管理員の業務範囲や勤務時間についても、実態と相違がないか細かく見ていきましょう。
2-2. 候補先のリストアップと見積り依頼
マンションの規模に合わせて、変更先の候補となる会社をリストアップし、条件や希望を明記して、見積もり依頼書を送付します。分譲時のパンフレットや平面図、消防設備点検報告書などが必要になるので、予め用意して一緒に送るのがお勧めです。
2-3. 会社へのヒアリング
現地調査の実施や、質疑応答は公開で行うなど、なるべく公平な条件で競争してもらう環境を作り、絞り込んだ候補会社に対してはヒアリングを行います。会社の実力はもちろん、現場担当者の知識、経験など、力量を見極めるためです。
2-4. 理事会での候補決定
理事会で候補を決定し、管理組合の臨時総会で、変更決議が承認されれば、新しい会社と契約、引き継ぎへと進むことになります。この決定プロセスが不透明だと、トラブルの火種を残す可能性があります。議事録を残すなど透明性を担保することも大切です。
2-5. 管理組合臨時総会での変更決議
修繕積立金や建物管理会社を変更するための決議は管理規約によって異なる場合がありますが、区分所有者の議決権数の半数以上の同意が必要です。
反対する方も中にはいるでしょうから、管理組合の理事会を通じて、区分所有者に丁寧な説明をしていくことが求められます。
まとめ
区分マンションの資産価値を維持し長期安定収入を実現するためには、まずは管理に関心を持つことが大切です。
入居者募集や家賃集金といった収益そのものの発生に関わる「賃貸管理」の部分だけでなく、「建物管理」にも目を配り、建物管理会社と適切な緊張関係を持つことが重要です。
いざという際の建物管理会社の変更には、最低でも半年の期間を要します。また、特に候補会社の選定などは専門知識が求められる部分もあります。
必要に応じて、マンション管理士などの専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
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