「シェアリングエコノミー」という言葉を、最近耳にすることが多くなりました。
シェアリングエコノミーとは、共有型経済とも訳されますが、一つの物や場所を多くの人と共有したり、交換する経済活動や社会的なしくみのことを言います。
典型的なシェアリングエコノミーとしては、個人や法人が持っている物や場所を、所有者本人が使っていない時に他人に貸し出すといった形式があります。
各業界でシェアリングエコノミーに対応したビジネスが広がっており、賃貸経営を行うなかでも見過ごすわけにはいかない動きとなってきました。
なぜなら、シェアリングエコノミーの普及は賃貸物件に生活する入居者の行動様式や意識の変化に他ならないからです。
厳しい競争環境のなかで生き残る賃貸経営を実践するためには、シェアリングエコノミーとその背景にある生活者の意識変化を正しく理解することが大切です。
その上で、サービスをうまく活用すれば、物件から得られる収益の最大化や安定化につなげることが可能となります。
ここでは、シェアリングエコノミーの実態について整理するとともに、そのサービスの一つである「カーシェア」を賃貸経営に活用し、収益アップにつなげた具体事例をご紹介します。
私たちは賃貸管理会社として370棟以上(2018年7月末時点)の1棟アパート・マンションを管理しています。この事例は、オーナー様からの収益力改善に関わる数多くのご相談を受け、実行してきた中でも、シェアリングエコノミーの活用に成功したものです。
是非この記事を、シェアリングエコノミーを賃貸経営に活用するきっかけとしていただければ幸いです。
不動産投資体験談
目次
1. シェアリングエコノミーは生活者の意識変化
「どうせITに強い人たちが使っているだけのサービスばかりでしょ?」
もし、そう思っているようであれば、それは間違いでしょう。なぜなら、シェアリングエコノミーと呼ばれるサービスは少数の“ITオタク”だけでなく多くの人にすでに支持され、身近なところで利用されているからです。
ここではシェアリングエコノミーの例と、賃貸経営においてこれを考慮すべき理由についてお伝えします。
1-1. シェアリングエコノミーと呼ばれるサービスの例
シェアリングエコノミーとは、個人が所有している遊休資産を貸し出す=シェアすることによって、使われていなかった資産に新たな価値をもたらす経済活動の総称です。インターネットとスマートフォンの普及が進んだことによって、GPSの位置情報なども利用しながら、サービスを受けたい人とシェアする物や場所を持っている人を簡単につなげられるようになりました。矢野経済研究所によると関連市場規模は500億円以上と急速に拡大しています。
関連するサービスは大きく5つに分類できます。
モノのシェア、場所のシェア、時間のシェア、移動のシェア、お金のシェアです。
1-1-1. モノのシェア
洋服や車のレンタル、あるいは物々交換をするフリーマーケットなどがこの分野です。
今スマートフォンネイティブ世代には最も人気のフリマアプリである「mercari(メルカリ)」が一番の代表例でしょう。
1-1-2. 場所のシェア
所有者が普段利用していない場所を時間貸しなどでお得に提供するサービスです。言ってみれば賃貸経営の小口化版です。
空きスペースレンタルや貸し会議室、駐車場や民泊などが該当します。
1-1-3. 時間のシェア
個人の労働力やスキルなどを共有して「切り売りする」サービスです。
たとえばクラウドソーシングや、「家事を代わりにやってほしい」「買い物を頼みたい」「語学の勉強をしたい」といった○○代行といったサービスで、多くの個人と個人がマッチングされています。
1-1-4. 移動のシェア
いわゆるライドシェアと呼ばれる分野です。
タクシー配車サービスの「Uber(ウーバー)」などが代表例です。日本ではスタートしていないサービスですが、海外では同じ目的地に向かう人がタクシーではなく個人の車に「乗り合い」するといった形式もあります。
1-1-5. お金のシェア
資金調達の方法もシェアが進んでいます。銀行から借りるだけでなく、企画に賛同する出資者を広く募るクラウドファンディングやソーシャルレンディングといったサービスです。
1-2. 賃貸経営に関わるシェアリングエコノミー
賃貸経営に関係するシェアリングエコノミーは、不動産自体や入居者の生活に紐づく物ごとについて、共有をする形のサービスが該当します。
代表的な例は以下になります。
- 空きスペースレンタル
- 貸し会議室
- 駐車場シェア
- シェアオフィス
- コワーキングスペース
- シェアハウス
- 民泊
- カーシェア
- サイクルシェア
1-3. 生活者の意識変化に合わせた賃貸経営が大切
それぞれのサービスについて事細かに触れているとキリがありませんが、賃貸経営を行う上で押さえておくべきポイントは、シェアリングエコノミーが普及しつつある根本的な理由です。
それは入居者としてお部屋に住む生活者の意識が、時代に応じて変わっているということです。
場所は言うまでもなく、車や自転車、服や家電に至るまでシェアが進んでいるのは、「自分で購入して所有する必要はない。必要な時に借りて済ませられるなら十分」と考える人が増えていることに他なりません。
意識が変われば、入居者が賃貸物件での生活に求めるものも変わりますから、オーナーとしてもそれに合わせた手を適切に打っていかなければ、時代に取り残されて競争力が低下してしまいます。
2. 事例で分かる賃貸経営へのシェアリングエコノミーの活用
シェアリングエコノミーを賃貸経営に活用するといっても、お手軽なものから特殊なノウハウが必要なものまで様々です。
今回は1棟アパート・マンション経営を行っている場合に取り組みやすいカーシェア導入の具体事例をご紹介します。
2-1. 都心ファミリー向け物件の意外な弱点は“駐車場”
オーナー様Aさんからご相談を受けた事例です。
物件は、初台駅から徒歩3分の新築アパートでした。総戸数2戸のアパートで、両部屋とも1LDKのタイプです。家賃は135,000円で、結婚前後の2人暮らしなどいわゆるDINKS層をターゲットとしていました。
アパートの前には車が2台止められるスペースがあり、1台はAさんが自分で使用し、もう1台分は貸し出したいというご要望でした。
「部屋を借りてくれる入居者に駐車場を借りてほしい」
Aさんはそうお考えでしたが、昨今の事情ではなかなかそれは望めません。
20代・30代で車を持つ人は少なくなってきており、特に東京都は公共交通機関が充実していることから、全国で最も車の保有率が低い都道府県となっています。
子どもが複数人いるような家庭ならまだしも、新婚のお二人ならなおさらです。135,000円の家賃に加えて駐車場代を払うとなると月々の出費もかさんでしまいます。
車は所有していないからお部屋だけ借りたいというお客様で成約した場合、駐車場だけが空いてしまい収益を生まないスペースになってしまいます。
1棟アパートに限らず、こういった「住人が駐車場を使わない」問題は都心のファミリー向け分譲マンションでも、まさに取りざたされている課題です。法律で規定された台数分の駐車場を確保しても、利用者が少ないため、スペースが余ってしまうのです。空きが多くなれば管理組合が得られるはずの駐車場賃料が減り、修繕積立金が計画通りに貯まらないといった事態に陥ります。
2-2. 収益の安定化と入居者満足度を高める!カーシェア導入の効果
そこで私たちがご提案したのが、カーシェアリングでの活用です。
駐車場をカーシェアリング運営会社に借り上げてもらうことで、毎月一定額を安定的に収益として得ることができます。車両整備や清掃、トラブル対応も運営会社が全て対応するため安心です。
月々の借り上げ額は運営会社による調査と査定によって決まり、立地や道路への動線など環境により異なります。今回の事例では月々30,000円での借り上げとなりました。
またアパートの入居者様にとっても、車を所有せずに出費を抑え、必要なときはマイカー感覚で車を利用できるというメリットが生まれます。
レンタカーをわざわざ借りに行かなくても、自分の住んでいるアパートの敷地内で24時間車を借りられるという利便性は、入居者募集時にも強みになりえます。
単に駐車場として貸し出すよりも、入居者満足度を高めることができるかもしれません。
まとめ
長期間にわたり賃貸経営を行うなかでは、時流に合わせた打ち手を常に考えていくことが大切です。お部屋の中の設備更新や建物管理だけでなく、入居者が生活しやすいかどうか?という視点で考えることで、総合的に不動産を活用し、より多くの収益を生み出せるようにできるのです。
カーシェアだけでなく、「家賃以外」の収入を生み出す方法や、固定費のコストダウンを図る方法は幾つもありますが、管理会社によってその提案力には差があります。
当社では、管理物件20,000戸の入居者対応から入居者のニーズを的確に捉え、物件の特長を勘案した最適なプランをご提案できます。空室でお困りの方はもちろん、不動産から得られる収益を最大化したいという方も是非お気軽にご相談ください。
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