管理会社の問題点や不満が浮上して、管理会社を変更すべきか検討されていませんか?
結論からお伝えすると、管理委託契約の見直しや管理会社の変更は積極的に検討すべきでしょう。なぜなら管理費用のコストダウンや管理の質の向上に繋がる可能性があるからです。
ただし、管理会社の変更には最短でも3ヶ月、合意形成の期間などを考慮して半年以上を要する場合もあります。組合員の同意を得るための適切なフローを踏む必要があり大変な一面もあります。
そこで今回は、複雑だと感じる建物管理会社変更の方法をたった3つのステップでわかるように順を追って解説していきます。
管理会社を変更しようか検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
不動産投資体験談
目次
1.管理会社を変更することで収益や管理の質が向上する
管理会社を変更することで、管理費用のコストダウンや管理の質(掃除、設備メンテナンス、住人の対応など)が向上する可能性があります。
ただし、検討すべきと言えども実行は慎重に行いたいものです。管理組合への同意が必要ですし、場合によってはトラブルに発展してしまう可能性や管理会社変更に伴うリスクもあるからです。
初めから、管理会社の変更を決め付けるのではなく、なぜ管理委託契約を見直すのか、根拠を基に考えるのが円滑な進め方です。
そのための具体的な管理会社変更手順を次の章より紹介していきます。
2.管理会社を変更するために必要な3つのステップ
管理会社を変更する為には、大きく分けて3つのステップがあります。
一般的に管理会社の変更が完了するまでに、選定の手続きを含めると半年以上かかります。このように、管理会社の変更には適切な手順に沿った『計画性』が最も重要と言えます。
これから紹介する3つのステップは『計画性』を重視したものではありますが、それぞれのステップごとに注意すべきことがあります。ぜひこれから紹介する手順に沿って着実に進めていただけますと幸いです。
まずは最初の2ヶ月で実行すべきステップを具体的に解説していきます。
ステップ1:問題点整理〜新会社の選定(目安:2ヶ月)
ステップ1では『現状の管理会社の問題点を整理すること』が重要です。組合員や入居者から現管理会社の不満や問題点などを収集しましょう。
この時に、口頭や一部の人だけの意見を取り入れてしまうと管理組合の中で派閥が生まれてしまったり、入居者から不信感を持たれてしまう可能性もありますので注意しましょう。組合員を対象に管理に関するアンケートを行うのも有効です。
⑴現状の管理会社の問題点を整理
例えば、最初に現管理会社の問題点を以下のように3つの観点で整理できると良いでしょう。
①共用部分の管理 | 玄関ポストに折り込みチラシが散乱している |
②管理会社の費用 | 他の管理会社と比較して管理費が高額 |
③修繕費用などの計画 | 3年後の大規模修繕に向けて費用が足りないことが判明 |
管理組合員にアンケートを行ない、現状のマンション管理に関して不満な点がないか集計をしましょう。
トラブルなく全員に納得してもらうためにも事前の問題点の整理は徹底しましょう。
⑵新管理会社の選び方の注意点
問題点が集計できたら、以下の2つの点に注意して新しい管理会社の候補を選びましょう。
- 現管理会社の問題点を解決してくれること
- 管理費用が安いという理由だけで選ばないこと
あくまでも新しい管理会社の見積もりやプレゼンテーションを聞いてみなければ、最終的な判断は出来ませんが、まずは上記2点を注意し候補となりそうな会社を5〜10社に絞り込んでみましょう。
なお、管理組合、入居者が感じる問題点を解消できるかどうかが最も大切なポイントです。事前に集計したアンケート結果をひとつの判断材料として選定していきましょう。
⑶各社の見積もりの取得方法
新しい管理会社の候補を5〜10社決めたら、各社に見積もりを依頼します。各社ともに正確な見積もりを算出するために、現地調査に来てもらうことになります。
また、現地調査を1日1社にしてしまうと時間と手間が掛かってしまいスケジュール通りに進めることができません。1日か2日で全社(5〜10社)に来てもらえるように上手に日程調整を行いましょう。(※管理組合の方々の立会いも必要です。見積もりの段階で要望を出したりヒアリングすることができます。スムーズに管理会社の変更が進むように、できる限り多くの方に立ち会ってもらえるよう上手く日程調整しましょう。)
現地調査のスケジュール例 | |
A社 | 9:00~10:00 |
B社 | 10:15~11:15 |
C社 | 11:30~12:30 |
D社 | 12:45~13:45 |
E社 | 14:00~15:00 |
現地調査から約2〜3週間後に新しい管理会社から見積もりと提案書が届きます。見積もりと提案書の内容を確認し、想定していた範囲の見積もりになっているか、集計した不満点を解消できるだけの提案書になっているかを確認し、候補となる会社を3〜5社までに絞り込みましょう。
そこまでできたらステップ2に進みましょう。
ステップ2:新会社のプレゼン〜決定(2ヶ月)
ステップ2では、新管理会社となる候補の数社(3〜5社)にプレゼンをしてもらい、最終的な1社まで絞り込みます。具体的な手順を見ていきましょう。
⑴新管理会社の比較検討とプレゼンテーション
候補の数社(3〜5社)から、実際に依頼する1社に絞り込むために、プレゼンテーションをしてもらいます。提案書と見積書の内容と照らし合わせながら判断していきます。
プレゼンでは以下のポイントを押さえておきましょう。
- 営業マンだけではなくマンション担当者(フロントマン)にも参加してもらう
- 組合員が参加できるように公開でプレゼンを行う。
- プレゼン参加者からアンケート形式で意見を集計する
- どうしても1社に絞り込めない場合は、再度プレゼンを行なってもらう
営業マンが実際の担当になるケースはほとんどありません。大切なのはこれからお付き合いを進めていく担当者(フロントマン)との関わりです。担当者の人柄を知るよい機会にもなりますので、担当者にも参加してもらう要望は出しておきましょう。
また、管理会社の変更は組合員や入居者にとって重要な出来事です。理事会や説明会で納得を得られなければ、管理会社を変更すること自体が困難になってしまいます。多くの組合員、入居者が納得できるよう、情報公開しながら選定手続きを進めていきましょう。
プレゼンを受け、納得できる1社に絞り込むことができたら次に移ります。
※あくまでもあなたが納得できるかではなく、組合員や入居者が納得できるかどうかを判断の基準にすることが大切です。総会で合意が得られないとそもそも管理会社の変更は可決されないからです。
⑵契約内容の再確認
次に新たな管理会社を臨時総会で最終決定するための「総会議案書の作成」と「契約内容の最終確認」を行います。
総会議案書を作成する際には、新たな管理会社にサポートをお願いしてみましょう。本来であれば、現管理会社にサポートをお願いするところですが、これからマンションを管理してもらう会社のサポート体制や対応能力を実感することが出来る良い機会です。できることなら、新たな管理会社にサポートを依頼することを推奨します。
総会議案書を作成できたら、契約内容の最終確認をしましょう。例えば「フロントマンの勤務体制の確認」や「追加で要望が無いか」などを詳細なポイントまで確認しましょう。特に問題がなければ次のステップに移り管理会社を決定します。
⑶臨時総会で管理会社の決定
新たな管理会社の最終決定では、以下の手順で進められます。
- 管理組合全員に対して重要事項説明をする(1週間前までに開催場所・日時を書面で交付)
- 臨時総会で管理会社の変更を決議
重要事項説明はマンション管理適正化法により義務付けられています。管理組合全員に対して書面で交付しましょう。
次に、臨時総会で管理会社の変更の決議を行います。臨時総会に出席した管理組合員の議決権の過半数から同意を得ることができれば無事に管理会社決定となります。
ここまでのステップを適切に行っていれば、納得している組合員が多数でしょうからスムーズにいくはずです。ただし、過半数を下回ってしまうことも当然あります。そうならないように事前のアンケートやプレゼンを確実にこなすことが重要です。
ステップ3:解約通知〜新会社へ引き継ぎ(3ヶ月)
ステップ3では、現管理会社へ解約の通知を行います。契約によっても異なりますが、一般的に解約の通知は、解約を行う3ヶ月前に通知する必要があります。その間に新管理会社の引き継ぎを行いましょう。
⑴現管理会社へ解約の通知(3ヶ月前)
臨時総会で新管理会社が決議された後に、現管理会社の解約を行います。
※特別な取り決めがない限り「マンション標準管理規約契約書」に準じているため、3ヶ月前通知が必要になります。したがって、解約日は通知をしてから3ヶ月以降になります。
⑵新管理会社への引き継ぎ
解約の通知後、猶予期間が3ヶ月あるので、その間に旧管理会社と新管理会社で引き継ぎを行います。
引き継ぎ内容は多岐に渡りますが主に以下の項目が考えられます。
・管理室の電話加入権の名義変更
・管理費などの口座振替手続き
・公共料金送付先の変更
・会計資料や過去の議事録の引継ぎ
ただし契約の内容による部分もありますから、双方から具体的にどのような事項について手続きを進めるべきか漏れなく確認しましょう。
また、すぐに引き継ぎが行えるものから、直前まで引き継ぎが行えないものもあるので、早いうちに引き継ぎを始めるように催促して、報告をしてもらいましょう。
特に下記のような重要資料や共用部分の鍵の受け渡しは、必ず理事長立ち会いのもと行いましょう。
理事長立ち会いのもと受け渡す必要がある物
- 竣工図面
- 過去の総会議案書および議事録の原本
- 過去の修繕履歴資料
- 通帳
- 共用部分の鍵
無事に引き継ぎが完了した段階で、管理会社の変更が無了となります。
3.管理会社を変更するデメリット
管理会社の変更をスムーズに行うことが難しいのは、以下のようなデメリットがあるからです。
今回紹介した3つのステップ通りに進めていただければ大きな問題は回避できるはずですが、事前にデメリットを知った上で変更の手順を踏むことでより確実に問題を回避することができるでしょう。
3−1.居住者に手間と不安がかかる
管理会社の変更は、居住者への手間と不安につながります。
・家賃の振込先の変更または、引き落とし口座の再登録が手間になる
・管理の質が低下するのではないかという漠然とした不安が生まれる
特に、2つ目の管理の質が低下するのではないかという目に見えない漠然とした不安はできる限り解消することに努めましょう。多くの方が不安を抱えていると、そもそも管理会社変更が可決されない可能性があるからです。
この不安は、これから先どう変化するのかが明確に伝えられていないことが主な要因です。例えば「マンションの清潔さを維持出来るのか」「以前と同じセキュリティーを確保出来るのか」などあらゆる事柄の変化について深く理解ができていない可能性があります。
したがって、不安や疑問をできるかぎり洗い出し、それが解消できる旨と、管理会社を変更したことによる具体的な変化を、事前に入居者に明確に伝えることが大切です。
3-2.管理業務の継続性が失われる
新管理会社への引き継ぎの際に問題となるのが、共用部分の鍵の紛失や、継続的に審議を行ってきた大規模修繕工事の停滞です。大規模修繕工事の積立金が管理会社が変わるタイミングで見逃され何ヶ月も停滞してしまうことがあります。
いずれも、理事長もしくは管理組合が間に入ることで未然に問題を防ぐことができます。業務の引き継ぎを管理会社任せにするのではなく、必ず理事長や組合員を間に挟み、あらゆる交渉、手続きを進めていくようにしましょう。
管理会社変更はあなた一人では実現できません。組合員含めてできる限り多くの同意や意思決定が必要になります。あなた一人で進めるのではなく、理事長もしくは組合員を含めて進めていくことは徹底しましょう。
4.まとめ
管理会社の変更は、ご紹介した通り3つのステップで考えていただくことで実行することができるでしょう。
管理会社の見積もりを数社からもらうだけでも、管理費用が抑えられることに気づくかもしれません。
管理委託契約の見直し、管理会社の変更を検討し、実際に実行する際には本記事で紹介した3つのステップを参考にしていただければと思います。
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