あなたは今、不動産を安く買えるのではないかと思い競売物件の買い方についてリサーチをしていると思います。
安くお宝物件が手に入ると聞くと大変魅力的ですが、私たちがお客様にアドバイスをする際には『初心者は競売に絶対手を出してはいけません。』とお伝えしています。
実際、初心者の方が競売に手を出した場合、ほぼ100%の確率で火傷をしてしまうといっても過言ではありません。
なぜならば、競売物件は法的に守られないため、もし買い受けた競売物件に瑕疵(=欠陥)があった場合には責任の追及ができなかったり、相場や物件状況などの情報不足で不良物件を高い値段で買い受けることになってしまった、なんてこともあります。
たとえば買い受けた物件に、前の入居者の残置物があったとします。勝手に処分したいところですが、法に則って正しく処分しないと損害賠償請求で訴えられてしまうこともあるのです。
それでも、この世界に入り追求していきたいという方のみ、この先の記事にお進みください。
この記事では、書類の書き方や落札までの流れなど、競売物件を購入する際にまずは知っておきたい基礎知識をお答えします。あなたが競売に手を出すべきか判断の基準にしてみてください。
繰り返しになりますが、競売をする際は本当にリスクを負えるか検討してから行動されてください。
不動産投資体験談
1.始める前に確認しておきたいこと
競売の流れや手続きをスムーズに理解できるように、知っておくべきことをご紹介します。確認しておきましょう。
1-1 競売物件と一般に流通される物件の違い
まず競売物件が、一般に流通される物件とどう違うのか知っておくと、より理解しやすいでしょう。大きく違う点を下記にまとめました。
一般に流通されている不動産は『宅地建物取引業法』という法律が適用され、消費者の保護を手厚く行っています。
これに対して、競売物件には『民事執行法』が適応されます。
物件そのものにかかる特別な法律はなく、安全な取引が法律で保証されているわけではありません。競売物件を購入するということは、買受人(落札者)が全て責任を持って行わなければならないということになります。
1-2 競売に参加できる条件
原則、期間入札の買受人となる資格に上限はありません。 誰でも参加することができます。ただし、次の方は参加できません。
- その競売物件の債務者
- 裁判所が制限した資格を有しない人
- 適正な実施を妨げる行為をした人
その競売物件の債務者
債権者(=返金請求の権利をもつ人)が無事金銭の回収ができるよう、債務者(=返金の義務がある人)が競売物件を買い戻すことができないようにしています。
裁判所が制限した資格を有しない人
裁判所が買受人を制限した場合はその資格がある人のみ参加できます。
例えば農地の競売において、裁判所が「市町村の農業委員会等が発行する買受適格証明書が必要」とすれば、この制約に従う人のみ参加できます。(補足:このような制約は、宅地に転用せず農地として使用できる人にだけ入札を認めたいという理由があります)
適正な実施を妨げる行為をした人
談合や入札妨害など、適正な実施を妨げる行為をした人は競売に参加できません。
さらに詳しく知りたい方は裁判所ホームページでご確認ください。
1-3 競売物件を調べるうえでかかせない3点セットとは
3点セットとは、全ての競売物件において必ず公開される書類のことです。
- 現況調査報告書
- 評価書
- 物件明細書
裁判所が作成しており、競売物件の情報はここから得ることができます。
3点セットのダウンロードについては2.競売の手続きと10のステップ「ステップ② 競売物件の選択・調査」をご覧ください。
物件明細書
物件明細書には、買受人が引き受けることとなる権利関係など、目的不動産に関する情報が記載されています。
各欄に短いコメントが書いてありますが、これは裁判所による所見です。中には注意を促しているものもあるため見過ごさないようにしてください。
現況調査報告書
現況調査報告書は、裁判所の執行官が現地調査を行い、物件の現状についてまとめた報告書です。
書類には敷地のデータや、公簿との相違点、不動産を占有している者の氏名および占有状況などが詳細に記述されています。
あくまで作成された時点の情報ですので変更があれば、間違っていることもあります。自分で確認するのが一番ですが、サポート業者に依頼するなどして、常に新しい情報を得るようにしましょう。
ただし、物件室内の内覧はプライバシー保護などの観点から基本的には難しいと理解しておいた方がいいでしょう。
評価書
評価書は不動産鑑定士が作成しており、物件の築年数や状態・権利関係、物件が所在する環境や、物件の詳細内容など、物件の適正価格を評価した根拠が記載されています。不動産および近隣の図面が載っているため、物件の概要を知るのに便利です。
全ての書類に言えることですが、競売で扱う書類はその内容を保証するものではありません。
1-4 意外と知らない競売の入札方法
不動産競売と聞くと不動産をせりにかけて売却するような、オークションのイメージかもしれません。
しかし、実際は「一発入札」の形をとります。一度希望価格を決めて入札してしまうと、変更や取り消しが出来ません。
もちろん、周りの価格を確かめることができないので、相場や物件状況などの情報不足は、大きなリスクとなるでしょう。
2.競売の手続きと10のステップ
次に、競売の手続きを10のステップで説明します。ひとつひとつイメージしながら読んでいけば、決して難しいものではありません。競売の流れと共に詳しく見ていきましょう。
ステップ① 予算額の検討
まず、予算額を検討しましょう。もちろんローンを利用することもできます。その場合は、金融機関に借入可能額を打診しておくようにしましょう。
ステップ② 競売物件の選択・調査
競売物件の物件情報を確認して、どの物件に入札するのか選択しましょう。 裁判所で競売物件を閲覧し、一枚40円を支払って3点セットと呼ばれる裁判所の報告書類をコピーするのが、不動産競売にかけられている物件をみる基本的な方法です。
しかし、裁判所まで出向かなくても、簡単に情報を調べる方法があります。
- インターネット上の検索システム「BIT競売情報システム」
- 一般社団法人不動産競売流通協会「981.jp」のホームページ
- 新聞の競売広告
インターネット上の検索システム「BIT競売情報システム」
裁判所が出している競売物件の情報を閲覧・検索できるシステムです。3点セットは、ここからダウンロードします。ただし、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台・水戸・和歌山などの各地方裁判所にエリアが限定されていますので、該当しない裁判所には直接出向く必要があります。
一般社団法人不動産競売流通協会「981.jp」のホームページ
不動産競売物件のポータルサイトです。全国の幅広い競売物件の情報を閲覧・検索できます。3点セットをダウンロードできますが、会員ログインが必要です。
新聞の競売広告
競売不動産物件は、朝日新聞・読売新聞・日経新聞などの夕刊や週間住宅情報などの不動産情報誌に、月2回程度掲載されています。閲覧開始日・入札期間などの入札情報も見落とさないようにしましょう。
新聞で見つけた競売物件の情報は、概略です。目星をつけたら実際の権利関係などの詳細を、裁判所で必ず確認してください。
以上の方法で、気になる物件をリストアップし、3点セットの内容を確認しましょう。
ステップ③ 入札(物件情報の公告~約2週間後)
入札開始日は「BIT競売情報システム」で公告(=告知)されますので確認しましょう。入札する物件を選んだら、入札手続きに入ります。
買受申出に原則必要なもの
- 裁判所でもらえる入札セット(入札書・入札用封筒・裁判所保管金振込依頼書・保証金振込証明書)
- 買受申出の保証金(公告書に記載の額)
- 印鑑(認印で可)
- 住民票(法人の場合は資格証明書または登記事項証明書)
まず、裁判所で入札セットをもらい書類の作成をしましょう。
【入札書の見本】※クリックすると書き方の参考例がでます
入札価額は、売却基準価額(3点セットに記載有)を2割下回る価額以上の金額を記入します。物件相場・諸費用等を調べ、慎重に決定しましょう。
次に、振込依頼書を使い、保証金を振り込みます。
【裁判所保管金 振込依頼書の見本】※クリックすると書き方の参考例がでます
保証金振込控えを保証金振込証明書に貼付し、住民票(法人の場合は資格証明書または登記事項証明書)と一緒に裁判所へ提出します。
【保証金振込証明書の見本】※クリックすると書き方の参考例がでます
どの物件にどのような内容の入札を行ったか等を確認できるように、提出する前に全ての書類(封筒も)をコピーして控えるようにしましょう。
ステップ④ 開札(入札期間の満了後1週間以内)
開札期日は「BIT競売情報システム」で公告(=告知)されていますので確認してください。 開札期日に裁判所に出向けば、開札結果が発表されます。「BIT競売情報システム」でも結果が確認できますので、必ずしも裁判所へ出向く必要はありません。
ステップ⑤ 売却許可決定・確定
最高価格で買取申し受け人に対して裁判所より売却許可決定が下されます。 その後、異議申し立て等がなければ、売却許可決定から1週間後に確定されます。
ステップ⑥ 明け渡し交渉
落札物件の占有者または所有者がいる場合は、明渡しに関する交渉を行います。
例えば、どこにも行く当てがなく、居座り続けている占有者に対して「引越し資金をもつので、いつまでに明渡ししてほしい」といった交渉を行うなど内容は様々です。
注意
「引き渡し命令」は、代金納付するまでできません。あくまで明け渡す日時や条件などの交渉となります。
ステップ⑦ 代金納付
売却許可決定の確定後、裁判所から代金納付について明記された「代金納付期限通知書」が届きます。複数ページありますので、この内容に従って必要書類を準備・提出して代金の納付を行います。
【代金納付期限通知書の見本】
ステップ⑧ 引き渡し命令・強制執行
代金納付後、落札物件の占有者または所有者にようやく「引き渡し命令」ができるようになります。明渡し交渉が難航している場合は、必要に応じて申し立てましょう。 引き渡し命令が確定すると強制執行の申し立てが可能になります。
最悪のケースですが、立ち退かない場合は強制執行がなされます。
ステップ⑨ 登記識別情報通知書の送付
代金納付手続後、裁判所から「登記識別情報通知書」が送達されます。権利証の役割をもちますので大切に保管してください。
ステップ⑩ 物件の引き渡し
引き渡しは、買受人の責任と負担で行います。 部屋の中にある家具などの動産がある場合は、勝手に廃棄してはいけません。法律の下で、手続きをとって処理します。
3.競売を利用するべき人とは
これまで流れにそって手続きを紹介しましたが、競売の経験がない初心者がこの手続きを完璧に行うのは、はっきりいって不可能に近いです。 そもそも、競売を利用するべき人とはどんな人なのでしょうか。
- 安さ以外に競売を利用したい理由がある
- 不動産業界で仕事をしていて自信がある
- どうしても特定の競売物件が欲しい
安さのためだけで競売にチャレンジしようと考えているのであれば、手を出すことは絶対やめましょう。特に、物件の需要が高まっている今、優良な競売物件ほどプロの業者が必死の争奪戦を繰り広げており、どんどん落札価格が上がっているのが現状です。
以前は大体2~3割ほど安く落札できるため、私たちも競売物件を利用していた時があります。もちろんプロの目線で選び抜いた物件しか入札しませんが、そんな優良物件は競争率が高いため、一般に流通されている物件価格と同じくらいになってしまうことがほとんどです。
だからこそ、初心者は絶対に競売に手を付けてはいけません。
それでもやるのであれば、競売物件の代行サービスを必ず利用してください。競売物件は閉鎖的に行われており、情報を集めるのが難しいため、初心者こそ経験豊富なプロを頼るべきです。
4.競売物件の代行サービスまとめ
ここでは、競売物件の代行サービスを選ぶ2つの基準をお伝えします。
入札前から引き渡しまで、手厚いサービス内容であること
物件の選定や入札価格のアドバイスなどきめ細かいフォロー内容がサービスに入っていることを見極めましょう。買受後の、落札物件の占有者または所有者との交渉まで、しっかりやってくれるかもポイントです。
成果報酬型であること
多くの経験豊富な業者が、競売物件に入札して来る可能性があります。プロとはいえ、必ずしも落札できるとは限りません。成果報酬で請け負ってくれる代行サービスを利用しましょう。
競売物件の代行サービスを2つご紹介します。
5.初心者が競売物件に手を出してはいけない3つの理由
初心者がなぜ競売物件に手を出してはいけないのか、3つの理由をまとめました。
- 物件情報や相場を調べきれない
- 全て自己責任でリスクを負わなければならない
- 手間や時間がかかり、割に合わない
理由1 物件情報や相場を調べきれない
通常であれば、物件の情報は不動産会社が丁寧に教えてくれ、重要なことは宅地建物取引主任者によって説明されますが、競売物件の場合、自分で物件の情報を獲得しなければなりません。
入札価格の参考になる「物件の相場」とは、立地の需要や似た物件の取引価格を参考に決めます。これを初心者がイチからひとりで調べるには限界があります。
もし買い受けた競売物件に瑕疵(=欠陥)があった場合には、瑕疵担保責任は追及できません。相場や物件状況などの情報不足で不良物件を高い値段で買い受けてしまった、なんてこともあるのです。
こんな物件も競売の対象に
- 競売の対象になる不動産に制限はありません。こんな物件や土地も競売の対象になります。プロでも3点セットを隅々まで熟読し、きちんと調べて購入するほど、物件選びは慎重に行わなければなりません。
- 建物が建築できない土地
- 長期間貸し続けなければならず、賃料を受け取る権利しかない土地や建物
- 買受後、ただちに壊して敷地を明け渡さなければならない建物
- 金融機関の融資が受けられない土地や建物
理由2 全て自己責任でリスクを負わなければならない
競売物件には必ず事件番号が付いています。ここでいう事件とは、担保行使、遺産分割、共有物分割、破産手続上の換価など、裁判所へ訴状が上がったもの全てを言います。
落札したあなたはその事件に積極的に参加する義務があります。例えば、所有者の意思に関係なく、売却される強制競売事件だった場合、物件を入居者または占有者が引き渡してくれない、などの思わぬトラブルに巻き込まれかねません。費用と時間をかけて強制執行の手続きをとったり、当事者として交渉しなければならないのです。
このようなリスクは初心者であろうとプロであろうと、全て自己責任です。
事件番号の符号が(ヌ)と表示されている場合は注意しましょう。強制競売にかかわる物件に表示されます。 債務者の意思は反映されずに裁判所の命令で手続きが進むため、買い受けた後になかなか引き渡してもらえなかったり、別途訴訟の費用が発生するなどリスクが高いと言えます。
理由3 手間や時間がかかり、割に合わない
割安で購入できたとしても、手間や時間がかかるため、トータルして考えると割に合いません。優良なお宝物件を見つけたとしても、同じようにプロも狙っています。そうなると、金額も上がってしまいなおさらです。
さらに、裁判所は、所有権の名義書き換えを行ってくれるまでしか関与しません。入札する物件を調べつくし、たくさんの書類や手続きを行い、無事に落札できたとしても、引き渡しは保証されていないのです。
もし、前の所有者が占領していた場合でも、落札者のあなたが占有解除をしなければなりませんし、不動産の中に家具などがあった場合は、法にのっとって処分の手配・費用が必要です。
強制執行ひとつにしても、各地方裁判所の職員である執行官の立ち会いや確認がかかせません。執行業者を雇うにも費用が発生します。
これらを総合的に考えてみると、私は割に合わないと思います。
まとめ
初心者が興味本位でやるには大きなリスクが伴いますので絶対にやめましょう。それでも、競売物件を狙いたい方は、必ず代行してくれるプロと二人三脚で行ってください。
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