不動産投資で成功するためには、ローンを使いこなすことが必須条件です。
いくら高利回りの物件であっても、高い金利で購入してしまえば、結果として不動産の収支は低調なものになってしまいます。反対に、利回りが低調でも、好条件でローンが利用できるのであれば、月々の収支も安定します。
ただ、不動産投資のローンは借りて終わりではありません。
むしろ、いかに効果的に繰り上げ返済を行うかによって、将来どこまで収益不動産を増やせるかどうかが決まるのです。購入したまま、繰り上げ返済を実行せずにほったらかしにしていては、収入を増やしていくことはできません。
特に、投資用のワンルームマンションを購入した場合、繰り上げ返済を行うことは資産拡大のために必須の条件です。
手取り利回り4%の都心の中古ワンルームマンションで計算すると繰り上げ返済を行った場合と行わなかった場合を比較すると、将来の資産格差は2,000万円以上にもなります。
そのため、やみくもに繰り上げ返済をするのではなく、メリットそしてデメリットを十分に把握して、あなたにあったタイミング、そして手法で行う必要があります。
この記事では、繰り上げ返済のメリット、デメリットをまずお伝えします。
そのうえで、不動産投資を成功に導く具体的な繰り上げ返済の方法について解説します。
繰り上げ返済を効果的にすすめて不動産投資を成功させましょう。
不動産投資体験談
目次
1. 繰り上げ返済の3つのメリット
投資用ローンの繰り上げ返済には3つのメリットがあります。
- 資産形成のスピードが加速する
- 金利上昇リスクに備えられる
- 支払い利息を節約できる
そのうち、最も大きなメリットが資産形成のスピードを加速させる効果です。
順番にメリットを確認していきましょう。
1-1 繰り上げ返済の最大のメリット|資産形成のスピードを加速する
一般的に投資用ローンは年収の6倍から8倍程度まで利用することが可能です。融資条件を満たした年収が500万円の方であれば、3,000万円から4,000万円が借入枠です。
仮に、借入枠のすべてを使い切ってしまったら、投資用ローンは利用できず現金で購入するしかありません。
このとき、繰り上げ返済を行って元本返済を行い、借入余力を回復させることで、次の物件をローンで購入することができるようになるのです。不動産を増やしていくためには、繰り上げ返済を行い、借入余力を作り出していくことが欠かせません。
繰り上げ返済を行った場合と、繰り上げ返済を行わない場合では、将来の資産額、収入額に大きな格差が生じます。数字でシミュレーションしてみましょう。
(事例)
・投資用ローンの借り入れ余力2,000万円
・毎年の投資余裕資金100万円
・1戸目の以下のマンションをフルローン(借入期間30年、金利1.6%)で購入する
・購入物件は価格2,000万円、手取り利回り4%(年間手取り家賃収入80万円)
・2戸目以降は同条件のマンションを買い進める
◆繰り上げ返済を行った場合と、しなかった場合の資産の格差
「A:繰り上げ返済を行わずに、現金を貯めてから購入した場合」と「B:繰り上げ返済を行った場合」を比較すると、繰り上げ返済を行ったほうが、同じ資金を活用したとしても、しなかった場合に比べて、資産額は約2,000万円(マンション1戸分)、年間の家賃収入額は80万円も違ってきます。
A繰り上げ返済を行わない場合
資産:マンション2戸 年間家賃収入160万円 / 現金1,800万円(余裕資金100万円×10年+家賃収入80万円×10年)
資産形成の推移
・20年目で2戸目のマンションを現金購入
・30年目で1戸目のマンションのローンを完済
B繰り上げ返済を行い、ローンを活用してマンションを増やしていく場合
資産:マンション3戸 年間家賃収入240万円 / 現金 1,000万円(家賃700万円(35か月分)+余裕資金100万×3年)
資産形成の推移
・12年で1戸目のマンションのローンを完済 / 2戸目をローン購入
・8年8カ月(累計20年8カ月)で2戸目のマンションのローンを完済 / 3戸目をローン購入
・6年5カ月(累計27年1カ月)で3戸目のマンションのローンを完済
入居者に味方につけるから繰り上げ返済で資産形成が加速する
このように、繰り上げ返済を行った場合と、しなかった場合では将来の資産額と収入額に差が出ることになります。
差が生じる理由は次の通りです。
繰り上げ返済を行う:家賃収入は2戸目以降のローン返済にも使える
繰り上げ返済を行わない:家賃収入は1戸目のローン返済だけにしか使えない
不動産投資のローンは、入居者から得られる家賃収入で返済することができます。
経費を差し引いた手取りの家賃収入で毎月のローンを返済できるのであれば、家賃下落や空室等を考慮しない場合、あなたは1円も利用しなくても借入期間が終われば、ローンのないマンションを手にすることができます。
ローンを完済できればマンションから得られる家賃収入は次のマンションのローン返済に充てることができます。
つまり、繰り上げ返済を行ってローンの完済スピードを速め、家賃収入を次のローン返済に充てられるような体制を作っていくことで、資産の拡大が早まるのです。
繰り上げ返済を行わなければ、借入期間が終了するまで家賃収入は次のローン返済には充てられません。これでは資産拡大のスピードが速まることはありません。
繰り上げ返済を積極的に活用すれば、ローンの借り入れ余力を回復して、次のマンションをローン購入できますし、1戸目のマンションから得られる家賃収入を新たに購入したマンションのローン返済にも充てられます。
1-2.金利上昇リスクに備えられる
ローンを変動金利で借りていた場合、金利が上昇すると毎月の返済額の負担も増え、不動産の収支を圧迫することになります。この金利上昇リスクに備えるには、繰り上げ返済が元本を圧縮するしかありません。
いまは不動産価格が上がっていますが、低金利で購入資金が借入できているため、ローンを利用しても不動産経営は成立します。
しかし、一転して金利が上昇してしまうと、利回りと金利の差が急激に縮まり、毎月の収支は赤字に転落しかねません。
長らく同じ状態が続くと永続的に同じ状況が続くと勘違いしがちですが、金利が上昇する局面は必ずやってきます。
きたるべき金利上昇局面に備えるためには、繰り上げ返済は欠かせません。
(事例)借入金2,000万円 金利2% 借入期間30年
・金利が2%から4%に上がった場合のローン返済額
金利 | ローン返済額 |
2% | 73,942円 |
4% | 95,483円 |
・同条件で500万円の繰り上げ返済(返済額軽減型)を行い、残債1,500万円にした場合
金利 | 繰り上げ返済なし | 繰り上げ返済あり |
4% | 95,483円 | 71,617円 (金利2%の返済額とほぼ同額) |
1-3.支払金利を節約できる
繰り上げ返済を行うことによって、早期に返済した元本部分にかかる支払金利を節約することができます。
たとえば、借入期間30年、金利1.6%で2,000万円のローンを利用したケースで考えます。
このとき、1年後に100万円を繰り上げ返済すると、約56万円の支払金利を圧縮することが可能です。
利回りに換算すると56.7%にもなります。同じ額を銀行に預けておくより、はるかに高い投資効果を期待できます。
繰り上げ返済なし | 繰り上げ返済あり | |
支払い利息額 | 5,195,611円 | 4,628,250円 (567,361円の節約) |
コラム 早期の繰り上げ返済ほど金利節約効果が大きい
繰り上げ返済を行う場合、同じ額を返済したとしても、返済時期が早ければ早いほど、金利の節約効果が高まります。
たとえば、借入額2,000万円、金利1.6%で借入期間が30年の場合、1年後に100万円を繰り上げ返済した場合の節約額は567,361円。これが10年後に行うと359,981円となり、実に約20万円も差が出ることになります。
毎月のローン返済は、元本部分と利息部分の合計額を返済していくことになります。そして、利息部分は元本の金額によって計算されるので、借入額である元本が高額であるほど、支払利息も高くなります。そのため、借入初期ほど元本も多く残っているため、毎月の返済額のうち、利息部分が占める割合も多くなり、完済時期が近づくほど利息部分は少なくなります。
繰り上げ返済は全額が元本の返済に充てられるため、借入金が多い初期ほど金利の節約効果も大きくなるのです。
※投資用ローンは住宅ローン控除の適用はないので早期の繰り上げ返済はメリットがあります。マイホームローンは住宅ローン控除の適用があるので、ローン減税効果を考慮して繰り上げ返済を実行する必要があります。
2. 繰り上げ返済のデメリット
繰り上げ返済にはメリットがありますが、やみくもに行えばよいわけではありません。ここでは、繰り上げ返済のデメリットについてお伝えします。
2-1 資金不足で投資と生活が行き詰まる
繰り上げ返済のデメリットは手元資金が枯渇してしまうことです。
手元資金が枯渇することで想定される事態が「投資機会の逸失」と「日常生活への悪影響」です。
2-1-1 投資機会の逸失
新たに収益不動産を購入する際には、自己資金が必要です。
たとえば、都内のワンルームマンションであれば、購入に伴う諸経費と頭金をあわせておおむね100万円が必要となります。
余裕資金を残しておかなければ、いざ目当ての物件が見つかったときも動くことができません。
投資機会を逸することにもつながりますので、次のマンションを購入するための自己資金分は手元に残しておきましょう。
2-1-2 日常生活への影響
所有する収益不動産で空室や滞納が発生すると、家賃収入が入ってこなくなります。
このときに、投資用の口座に余裕資金がなければ、生活資金から投資用ローンの返済を行う必要があります。
また、入居者退去後の内装リフォーム工事の費用やエアコン、給湯器の交換費用もオーナー負担となります。
いざという時の支出に耐えられるだけの余裕資金は繰り上げ返済をせずに、投資口座に残しておきましょう。
コラム 余裕資金は「投資」「生活」の2つの財布で考える
余裕資金の考え方は「投資」と「生活」の2つの側面で考えます。
投資の場合、追加投資を行うために最低限必要な金額として80万円から100万円。
そして、「生活」の余裕資金としては、1か月分の生活費(病気ケガ介護などの突発的な事由による収入ストップ)および再就職に要するまでの期間(3ヶ月~6か月)で考えるとよいでしょう。1カ月の生活費20万円であれば、20万円+60万円~120万円となります。
2-2 完済するまで効果を実感しづらい
繰り上げ返済が続かない最大デメリットは、効果を実感しづらいことです。
繰り上げ返済のうち、後述する期間短縮型の返済方法を選択した場合、たとえ繰り上げ返済で当初の期間が30年から15年に軽減できたとしても、返済期間中の手取り収入は一切変わりません
例えば、都内の中古ワンルームマンションを30年のフルローンで購入した場合、月々の手取り収入額は数千円~1万円程度です。
15年後にローン完済してはじめて、ローン返済額が差し引かれない家賃収入を受け取ることができます。
効果を実感するまで先が長くなるため、モチベーションが低下して繰り上げ返済が止めてしまうこと十分考えられます。
3 繰り上げ返済の2つ種類の選び方|期間短縮型と返済額軽減型
繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の2種類の方法があります。
3-1 期間短縮型
期間短縮型の繰り上げ返済は、毎月のローン返済額は変えずに、完済までの期間を短くする繰り上げ返済手法です。
・利息軽減効果の大きい「期間短縮型」
利息の軽減効果は、期間短縮型繰り上げ返済のほうが大きくなります。繰り上げ返済に充当することのできる資金に余裕がある方は、期間短縮型がおすすめです。
3-2 返済額軽減型
返済額軽減型の繰り上げ返済は、借入期間はそのままで、毎月のローン返済額を軽減する繰り上げ返済の手法です。
・不動産収支を改善させる「返済額軽減型」
繰り上げ返済を行うたび、ローン返済額も減少しますので、手取りの家賃収入額が増えることになります。
そのため、余裕資金が溜まりやすくなり、繰り上げ返済の資金として活用したり、将来の修繕や内装リフォーム工事に備えやすくなります。
購入当初の不動産収支に余裕がない方は、返済額軽減型の繰り上げ返済がおすすめです。
4.繰り上げ返済の注意点
4-1. 確定申告時の注意点 |繰り上げ返済額は経費にならない
繰り上げ返済額は経費として計上できないので注意が必要です。
毎月のローン返済額でも、利息部分は資金の調達コストとして経費計上できますが、元本は借りたお金を返すだけなので、経費になりません。
ただ、繰り上げ返済に伴う金融機関に支払う「手数料」は経費として計上することは可能です。
4-2. 早期完済に違約金がある金融機関もあるので要注意
早期の繰り上げ返済について、残債の1%などの違約金をとる金融機関もあります。違約金がかかる期間で返済は、繰り上げ返済のメリットが薄れてしまいますので、事前に必ず確認しておきましょう。
また、金融機関によって、最低額の繰り上げ返済金額が設定されていたり、手数料がかかるケースもあるので、あわせて確認しておくことをお勧めします。
まとめ
不動産投資で資産を形成しようとするなら、繰り上げ返済は必須です。
ローンを借りたままでは、手取りの家賃収入は増えませんし、投資を継続するモチベーションも続かないでしょう。
収益不動産を購入する際には、毎年どれくらい繰り上げ返済できるかも考慮して、資金計画を立てることをおすすめします。
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