新たな不動産投資の手法として、 自宅の空き室や別荘を旅行者に貸し出す、 民泊に興味を持っている人も多いのではないでしょうか。
代表的な民泊サイト「airbnb(エアビーアンドビー、以下エアビー)」には、 日本国内で約50万人がエアビーで宿泊したそうです(2014年7月~2015年6月)。
これだけ民泊利用者が増えているなら、 物件を賃貸に出さずに、エアビーを使ったほうが、 高い収益が得られるのではないか。
そういう考えも頭をよぎりますよね。
とわいえ、実際にエアビーを利用したことがある方は、 それほど多くはありません。そこで、不動産会社の社員である私が、 実際にエアビーを使って、民泊を体験して見ました。
話題のエアビーを利用するには、どのような手続きが必要なのか。 ホストとゲストとのやり取り、鍵の受け渡し方法など。
あなたはもう知っていますか?
この記事では、実際にエアビーを利用した民泊体験記を紹介しながら、民泊のリスクや落とし穴について、 不動産会社の社員の目でズバっと切り込んでいきます。
これから民泊しようかと考えている方は、 まずはこの記事を読んでから考えて見てください。
不動産投資体験談
目次
1.エアビーのアカウント作成
エアビーで宿泊先を探すことはできますが、 宿泊の予約を入れるためには、 必ず自分のアカウントが必要になります。
まずは、自分のアカウントを作成していきます。名前、メールアドレス、パスワード、誕生日を登録します。
登録したメールアドレスにエアビーから、返信メールが届きます。この返信メールをクリックして、次はプロフィールを作成します。
プロフィールの作成で、必須項目となっているのが電話番号です。電話番号を登録して、smsで認証をクリック。
すると、登録した携帯のsmsにパスワードが送られてきました。smsに書かれている4桁の認証コードを入力して、認証をクリック。
これでアドレスと携帯電話が、登録した送信者のものかどうか、確認を取っているわけですね。
「旅行の目的」を記入して、決済に使うクレジットカード番号を登録します。 ちなみに、支払い方法はクレジットカードしかありません。つまり、クレジットカードが持てるくらいの信用力がないと宿泊できない訳です。
ようやく完了かと思いましたが、IDの認証確認はこれからでした。
IDの認証確認は正式な身分証明書の画像とオンラインプロフィールとの照合で行います。
まずは、正式な身分証明書ですが、これは政府発行の身分証明書のこと。 つまり、パスポートのことです。
過去に海外出張に行った際、パスポートのコピーを総務部に提出していたので、 登録を済ませようとしたのですが、なんとエラーができました。モノクロはNG、カラーでの再提出を求められました。
自宅のタンスに閉まってあるパスポートを探し出し、 なんとか登録をすることができました。
次は、オンラインプロフィールとの照合です。
Facebook、Gmail、LinkedInのいずれかと同期しなければなりません。
私はFacebookしか使っていませんので、Facebookと同期しようとすると、なんとここでもNG。最近の投稿履歴があるような、アクティブなオンラインプロフィールでないとダメなようです。
5年前にアカウントを作成して以来、すっかり放置していましたので、 久しぶりに書き込みをして、なんとか登録を済ますことができました。
次は、いよいよ宿泊先を探していきます。
2.エアビーでの宿泊先探し
エアビーのアカウントを持っていなくても、 宿泊先を見ることはできます。
エアビーの検索窓に、宿泊先の地名を記入すると、 登録されている物件が出てきます。右側には地図が表示され、宿泊可能な物件の周辺状況を確認することができます。
日付、宿泊人数(1人~16人∔)、部屋タイプ(まるまる貸切、個室、シェアルーム)と、 詳細検索も可能です。
宿泊先の候補を選んで日付を見ると、宿泊の予約状況を確認することができます。宿泊費と予約状況を見るだけで、おおよその収益を予想することができる訳です。人気の物件は、2ヵ月先の予約まで入っていました。
一方で、宿泊の予約が全く入っていない物件もあります。両者の違いは明らかでした。それは2つのポイントを満たしているかどうかの差です。
私は1万円の予算を使って、新宿で宿泊先を探すことにしました。
まず、参考にしたのは写真です。
直接、足を運んで宿泊先を選ぶ訳ではありませんから、 写真の映り1つでイメージが大きく左右されます。外国人旅行者を対象にしているためか、 着物や鎧など、和のテイストを映し込んだり、 写真の撮り方にも工夫がされていました。なかには、明らかにプロが撮影したと思わる物件の写真も、 たくさんありました。
もう1つ参考にしたのが、レビューです。
レビューには、実際に部屋に泊まったゲストから、 ホストの対応についての感想が書かれます。
このレビューが多ければ、 それだけ実績があるホストということになります。顔の見えないエアビーでホストの信頼度を測る上で、 レビューが大きな役割を果たしている訳です。
外国人旅行者のゲストが多いため、英語で書かれているレビューがほとんどです。英語が読めなければ、レビューの内容は分かりませんが、5つ星の評価で視覚的にも判断できるので参考になります。
実際、私が選んだ宿泊先も、写真の見栄えして、 レビューの書き込みが豊富なホストの部屋でした。
3.宿泊までのホストとのやり取り
実際の宿泊日まで後4日間、その期間のホストとのやり取りを紹介していきます。
宿泊の予約を済ますと、10分ほどでホストから書き込みがありました。
早速、鍵の受け渡し方法を尋ねてみました。
なんと、ホストが直接会って、部屋を案内するとき、鍵を渡してくれるそうです。直接、お会いするとは思っていなかったため、少しドキドキです。
前日、再びホストからメッセージが届きました。
アイロンを使わない旨を伝えて、待ち合わせ場所を了解したことを伝えました。
いよいよ当日を迎えます。
電車を1本乗り遅れてしまい、待ち合わせに10分ほど遅れそうなことを伝えました。
とても丁寧な対応です。
慌てて、待ち合わせのTULLY’sに着くと、私が宿泊のボストンバックを持っていたため、すぐに分かった様子。どちらからとなくお互いが挨拶しました。
物件まで5分、一緒に歩いている間、チャンスとばかりに質問をぶつけてみます。
私「昨日も、誰か泊っていたんですか?」
ホスト「ええ、外国の方です」
私「やっぱり、外国の方が多いんですか?」
ホスト「ほとんど外国の方ですね。たまに自分でも使ったりします。」
私「普段は、どこに住んでいるんですか?」
ホスト「自宅は別にあるんです。仕事で遅くなるとき、空いていれば利用します。」
私「いつも、鍵渡しを自分でやっているんですか?」
ホスト「仕事で東京にいないこともあるので、その時は、スタッフにお願いしています。きちんと清掃もスタッフが行っていますので、安心してください。」
そんな、やりとりをしているとアッと言う間に物件にたどり付きました。
4.エアビー物件の概要
私が宿泊した物件は、東京メトロ副都心線「東新宿」駅から徒歩5分にある築37年、総戸数66戸のワンルームです。
エントランスは番号入力式のオートロックになっています。
ホストと一緒にエレベータに乗り、部屋のある10階まで上がり、部屋の玄関ドアのまで、ホストから鍵が手渡されました。
ちなみに、鍵はディンプルキーです。このタイプなら900円を支払って1週間もあれば複製が可能です。
後から同僚に聞いて分かったのですが、私が宿泊先に選んだマンションは別名『エアビーの巣』とも言われているそうです。
現在の法律では、民泊は旅館業法に接触するおそれもあり、 法律的にはグレーといったところです。マンションの管理規約でも、住居としての使用しか認めていないマンションはたくさんあり、民泊として利用することが難しいのが現状です。
エレベーターに設置されていた防犯カメラが壊れたまま、 放置されているところからも、この物件の管理組合は機能していないこと明らかです。管理組合の監視の目が緩いことを逆手にとって、 勝手にエアビーに出している入居者がたくさんいるのです。
実際、私がチェックインした後も、携帯電話を片手に持って、大きなキャリーバックを引きながら、他の部屋を訪れている外国人旅行者の姿を見掛けました。
5.ホストからの注意事項
玄関ドアを開けると、スリッパが1つ置かれています。部屋に入って室内確認をしていると、ホストは玄関に立ち止まったまま、注意事項を説明し始めました。
ホストからの注意事項は以下の6項目です。
5‐1.外側のサッシを開けないでください。
この部屋はバルコニーがない構造で、落下防止のためだそうです。「NOT TOUCH」というカードが貼られていました。ちなみに「NOT TOUCH」というカードは、サッシの他に、IH、キッチンのスペース下部、電気温水器が隠されているドアの4ヵ所に貼られていました。
他にも、外国人旅行者を意識してか、サインは全て英語。テーブルの上には「Welcome to Tokyo thank you!!」と書かれたサイン置かれています。
5-2.冷蔵庫の水は飲んでも大丈夫です。
冷蔵庫のなかには350mlのペットボトルが1本入っていました。
他の仲間が宿泊した部屋には、リンゴやバナナ、ポテトチップス。 さらに缶酎ハイまで置かれていたそうです。
それに比べれば、ずいぶんと寂しいですね。
5-3.Wifiは使っても良いですよ。
外国人旅行者を意識してWifiが置かれていました。
どうするかと訪ねられたので「ぜひ、利用させてください。」と答えると、ホストと別れたから10分後、Wifiとオートロックの暗唱番号がメッセージで届きました。
5‐4.退出の際、鍵はテーブルの上に置いてある封筒に入れて、玄関ドアのポストに入れてください。
チェックインとチェックアウトの方法をまとめると以下のようになります。
- チェックイン 当日ホストからの手渡し
- チェックアウト 鍵を封筒に入れて玄関ドアのポストに投函。その後、ホストにメール
5‐5.チェックアウトは11:00退室したらメールで教えてください。
ゲストの退出を確認したら、清掃スタッフの手配を行いたいとのことです。
5‐6.チャイムが鳴っても出ないでください。
「誰か訪ねて来るなんて、あるんですか?」思わず訪ねてしまいました。
『新聞の勧誘などがたまに来ます』という回答でしたが、 おそらく民泊していることを、管理組合や管理会社に知られないため、 チャイムがなっても出ないように注意しているようです。
6.万が一の事故が起きた際、ホストの対応
エアビーでは、部屋を貸したい人をホスト。部屋を借りた人をゲストと呼びます。
この呼び名からも分かるように、エアビーは不動産業よりもホテル業に近い対応が成功を分けることになります。つまり、ゲストに対してホスピタリティーを持った対応をできるホストかどうかということです。
この点からいえば、私のホストは合格でしょう。
実は宿泊中、部屋中を血まみれにするトラブルに見舞われました。
部屋の居室とバスルームの間にある段差に躓き、右足の親指を大きく損傷してしまったのです。傷口は思ったよりも深くて、バスタオルだけなく、部屋中がおびただしい量の血で汚れてしまいました。
本当に申し訳ないことです。
宿泊中の深夜の事故だったので、翌朝、エアビーを通じて、 退出する旨とともに、血で汚してしまったことを伝えました。
こうした万が一の備えとして、エアビーでは保証金という項目が設けられています。 ホストは保証金を請求することができるのです。でも、ホストから来たメッセ―ジは以下のようなものでした。
素晴らしいホスピタリティーに感動してしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。
思わず、レビューを書いて、感謝の気持ちをお返ししたくなりますね。
7.エアビーのリスクと落とし穴
エアビーのシステム自体はしっかりしたものです。おそらく悪戯に宿泊の予約されることは、まずありません。ただ、問題はシステムではなく物件のセキュリティーに目を向けると エアビーの運用にはリスクが見えてきます。
先ほどご紹介した私が宿泊したマンションですが、すでに私はオートロックの番号を知っています。 鍵も複製しようとすれば、簡単に作れるものでした。そのうえ、エアビーで宿泊上を確認すれば、本日は空室かどうかも確認することもできます。つまり、室内に侵入しようと思えば、容易にできてしまうのです。
また、私のように怪我をしたり、なんらかの事件があってゲストが亡くなった場合、事故物件として扱われてしまいます。
エアビーで運用をすると言うことは、 セキュリティーの悪化を招き、マンションの資産価値下落にもつながっていくリスクがあることを知っておきましょう。
まとめ
エアビーを利用して見たからこそ、気付いた点をまとめてみます。
- 本人確認は厳重なシステムで行われている。
- アカウントを持っていないと宿泊予約ができない。
- 物件の宿泊条件と予約状況から収益性を予想できる。
- レビューがホストの信用度を測る。
- 物件のイメージは写真が決める。
- 不動産業でなくホテル業に近い、ホスピタリティーを持った対応が重要。
- エアビーでの運用は、セキュリティーの悪化を招く。
2020年の東京オリンピックに向けて、民泊の全面解禁に向けた取り組みが進められています。
今後、エアビーを利用した民泊での運用は、ますます注目が集まることが予測されますが、 後から後悔しないためには、予めエアビーにはリスクや落とし穴があることも知っておきましょう。
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